ーーーーーーーこのコンペは終了しました。ーーーーーーーーー

2017年 テーマ  ~旅行者の為の公園~

2020年まで、3年を切りました。 

旅行者の増加と共に、我々が日常目にする、当たり前のものも、

見直しをしなければならない時期だと思います。

 

例えば公園もそのひとつです。

 

公園には一般的に環境維持/改善と、

利用者の休息、観賞、散歩、遊戯、運動、防災等の用途がありますが、

近年、保育園や飲食店舗の併設が可能となるなど、

従来の考え方から飛躍が可能な施設でもあります。

 

3年目を迎えたこのコンペは、この「公園」に目を向けたいと思います。

観光地周辺の公園を想定し、様々な旅行者の為に整備された

「観光公園」のアイデアを募集します。

 

そのアイデアは、公園全体のデザインでなくても構いません。

ベンチやサインデザイン、イベントデザインでもいいですし、

意外な場所に公園を設置してもいいでしょう。

 

旅行者の休息だけでなく、情報交換、地域との接点、異文化交流等

 

今までにないスタイルの公園が 生まれることを期待しています。


■提案部門

2017年提案部門 最優秀賞

根岸亜美

「 凹(oh!)ハッピーベンチ 」

この提案は、車いす利用者はベンチを利用する際、いつも端っこになってしまうことに注目し、3人掛けのベンチの真ん中に入れるように考えた案です。さらに、利用者は車いすユーザーに限定せず、ベビーカーと一緒の夫婦や、キャリーバックを持っている旅行者など幅広く「旅行者」の為に考えられたベンチになっています。

議論になったのは、まったくデザインされていない「企画」の提案だった点をどう評価すべきか…でした。ただ、このコンペが、様々な職種に開かれた場所でありたいこともあり、最後まで勝ち残った案です。

優秀賞

幕田 早紀「 1㎡の静寂 」

千葉大学

この提案は、日本にはほとんどないムスリムの方用の礼拝室を公園に設けるというもの。最低限の1m2の場所から、公園の既存建物(トイレ)と親水空間と組み合わせた大規模なものまでを想定していて、旅行中礼拝場所(公園)を意識することによって、災害時の一時避難場所としての公園を意識づけさせるなど、現実的なところを抑えつつ、大胆なデザインもされているところを評価したいと思います。

優秀賞

七條友紀「 GALLERY PARK 」

多摩美術大学

この提案は、海の見える場所にベンチを置くというシンプルな提案ですが、なんでもない風景を少ない操作で公園化できる点としっかりデザインされているところを評価しました。

審査員からは、日本の海岸線は長いけれど、多くの場所は防波堤などの護岸工事でコンクリートに固められ、景観上の配慮が無く、海の風景(地域)の価値を落としている。護岸工事を壊すことなく、風景を取り戻す良案との評価でした。どなたか海のある地域の方、作ってみませんか?

本多賞

菊地 絢子 本村友力「 町にふれる 旅の公園 」

千葉大学 早稲田大学

この提案は、草津温泉の駅の近くを想定し、足湯ならぬ、「手湯」と手で触って楽しむ立体地図を組合わせた旅行者が楽しみながら町を知ることができるサインになっています。

この提案が気に入ったのは、車いすユーザーは、靴を脱いで椅子に移譲して足湯に入るのはかなりの手間ですが、手だけならば入れやすいでしょうし、視覚障害の方も、温泉の温かさや香り、そして立体地図の触覚で楽しめるでしょう。

阿原賞

盆子原 志歩 岩下 晴香 潤居 優希 世古みずき 「旅の洗い場」

北九州市立大学

壮大な計画!巨大な雨水ろ過装置の周りに、洗濯スペース、お風呂を用意しています。(服の洗い場、自分の洗い場)旅行中の洗濯/入浴に注目し、水の大切さを伝える公園になっています。今回協賛していただいたLIXILから、5年、10年先の水回り商品の開発に携わっている阿原さんが、審査員に加わってもらい選んでいただいた提案です。

劒持賞

井上あい「 京都まちパーク ー街中に現れる小さな公園ー」

京都府立大学

京都の祇園祭の行事である「山鉾」(やまほこ)に注目し、旅行者、学生、地域の人が出会える「みにほこ」を町中に点在させる提案。

最近京都で仕事をして歩いていると、全国で一般的にある公園が実に似合わないことに気が付きますし、歩いていて休憩する広場や公園が無いことも痛感します。この提案のように、極小の公園のネットワークが、地域の公園の機能を担保するのは、「旅行者の為の公園」の大事な点かもしれません。

本間賞

矢藤 洋子 柳田 宏治 林 卓志「 フル・インクルーシブな遊び場「で・あ・う公園」 」

みーんなの公園プロジェクト(市民グループ)

この提案は、すべての子供を受け入れることのできる公園を目指しているものです。日本は障がいの有無で通う学校が違う、「分離教育」を取り入れています。公園も現実的にはだいぶ「分離」されており、一緒に遊ぶことが難しい遊具ばかりなのが現状です。2020年を機に、日本中の児童公園が「誰もが一緒に遊べる公園」に変わってほしいですし、この提案を機に、色々な建築、デザイン関係者に知ってもらいたいと思いました。

オランゴ賞

高林祐太  「 NAP 」

フリーランス

観光地周辺に点在する「空き家」に注目し、旅行者の休憩、情報収集、情報交換の拠点として整備する提案です。宿泊や調理を伴わない時間制の場所貸しであれば、事業を開始するハードルは低く、庭と縁側と6畳間があれば始められるビジネスの予感も感じさせる案



テーマについて… なぜ、今「公園」なのか?

今年のテーマは、部門によって変えました。なぜ「公園」をテーマにしたのかについて、少し補足を加えようと思います。

私(バリアレスシティアワード実行委員会本多)は、昨年、オリンピック/パラリンピック ユニバーサルデザイン2020連絡会議に参加し、その中で、国が目指す共生社会への指針作成に立ち会いました。

1964年のパラリンピックが契機となり、障がい者の社会参加、自立、スポーツ、文化活動への参加などが進み、それまで街に出ない(出ることができない)方が一歩踏み出す、大きなきっかけになったのは間違いのない事実です。今回の2020年も大会の成功だけでなく、未来に何を残せるのか?未来が変わるきっかけになれるか?が問われます。
これを「レガシー(遺産)」という言葉で発信しています。

 

この会議の「最終とりまとめ」の中で、この大きな機会を東京やその周辺だけに終わらせるのではなく、全国の都市にも波及させることが明記されています。その中に、公園の整備が挙げられているのです。

自分が旅行者なら何が欲しいか?

一方、公園は昭和31年に作られた都市公園法に沿って作られていますが、基本的には居住者への公共施設として整備されています。しかし、現在観光地のある都市に住んでいる方はわかると思いますが、確実に旅行者が街にあふれ、さらに倍の観光客を呼び込もうとしている現状があります。居住者だけを考えた公園ではない発想も必要になってきていると感じます。

自分が海外旅行で建築を見て歩くとき、公園や広場をよく使います。次どこに行くかの作戦会議、疲れた時…今はたまたまあったから利用するというものでしょうけど、積極的に旅行者の為にデザインしたら、どんな機能があったらいいか…そんな風に考えてください。

「公園」×「○○」

 

最近、都内では保育園を併設できる公園がニュースになっていました。環境が良く、新たに土地の購入費が抑えられるなどこの組み合わせは素晴らしいと思います。また、例えば上野公園などには、「喫茶店」ができ、「動物園」「美術館」「博物館」があります。こうした公園に何かを併設することで、地域の公共の福祉に貢献し、さらに旅行者にもメリットがあるそんな公園ができないでしょうか?

思いもよらない「何か」を公園にもってくることで、見たことのない公園もできる気がしています。

 

公園のイベント

まだまだ、自由ではありませんが、公園でイベントの開催もできます。音楽やパフォーマンス、屋台などの店舗。仮設建築をうまく使ってイベントをデザインするのも旅行者に良いかもしれません。その際に、観光地にあるお土産物屋や飲食店など公園の外の店舗や人と連携するようなイベントも面白いと思いますし、旅行者同士が知り合うようなきっかけを作るのもいいでしょう。イベントの場合、ボランティアでやる人はいないでしょうから、誰がどう利益を挙げるのかまで考えられたら素晴らしいですね。良い案は手伝いますので、実際にできることを考えてください!

 

地元に旅行者を

公園を考えるとき、なるべくイメージできる公園を選ぶか、良く知っている観光地を選んで下さい。このコンペは夢物語でもいいのですが、できれば実際にどこかで施工をしたいと考えています。2020年を契機に、東京だけでなく、日本各地に旅行者が遊びに行き、地方創生にも貢献できるアイデアもいいと思います。

その際、例えば観光地に公園がないなら、使われてない家や道や川を公園にしてしまってもいいでしょう。空き家ビルを公園と言い張ってもいいです。既成概念にとらわれず考えてください。

 

3人に1人は高齢者の時代

日本は超高齢社会です。そして、旅行する時間がたくさんあるのも、高齢者です。若い方はイメージが難しいかと思いますが、疲れて休んだり、小さな段差が危なかったり、階段だとそれ以上先には行かなかったりと、行動にどうしても制限が掛かります。車いすの人も増えるでしょう、つえを使っている人もいるはずです。目は見えにくくなります。こうした方への配慮した公園が点在する観光地ならば、多くの人がリピーターになるはずです。

弱者にやさしいデザインは、例えばベビーカーを押す若い夫婦にも有効かもしれません。どんな公園をデザインしてもかまいませんが、「公共」であることを忘れないでください。

 

今、公園にあるもの ないもの

今、公園にあるものを思い出してください。ブランコ、滑り台、水飲み場、あずまや、ベンチ、砂場、外灯、看板、噴水、トイレ、木、フェンス、花壇…このデザインは適正でしょうか?もし、利用者が外国人も含む、車いすユーザーも利用する、聴覚障がい、視覚障がいの方は利用すると考えた際に、適正でしょうか?まずは、このデザインの見直しもいいかもしれません。

次に、今ないけど、あったら楽しいものを想像してみてください。公園に風呂とか(笑)公園に宿泊室とか(笑)今は無いけど、あったら楽しいとか便利とかそんなレベルから発想もよいかと思います。

 

旅行中の被災

最近、公園の価値で大きなウェイトを持っているのが、災害時の避難場所としての機能です。防災関連のことも頭の片隅においてもらえるといいですね。近隣住民はいいですが、旅行中一人で大地震にあったことをイメージしてください。異国で、しかも何かハンデがあったり、もしくは、ケガをしているかもしれません。病院も壊れちゃいました。頼れる場所は偶然見つけた公園だけ…なんて状況で何があったらいいでしょう。観光地によっては旅行者が大半で住んでいる人はほとんどいない場所だってあるはずです。何が必要か?それは普段何に使われているのか?重要ですね。

 

色々書きましたが…

もっと書きたいことはたくさんあります。

でも、一度このあたりにしておこうと思います。皆さんの自由な発想を期待しています。気が向いたら、ここに書き足そうと思います。もし、行き詰まったらこのページに再度アクセスしてみてください。ヒントがあるかもしれません。

(雑な文章ですみません。思いつくまま書いてしまいました…)


■2017年9月20日 第三回バリアレスシティアワード開幕

昨年の入賞者情報はfacebookに掲載しています。昨年、一昨年の優秀作品集を作成中です。ご希望の方は、お問い合わせよりご連絡ください。送料をご負担いただきます。10月中旬までお待ちください。